エピグラフとかエビピラフ 8/人間の創造力(と言って悪ければ加工力)


ペノーネにとって彫刻のメディウムである木材は、彫刻家のイマジネーションが投影され、変化させられる無垢な素材ではなく、それ自体が固有の歴史を持ったものとして扱われている。そしてその固有の歴史が彫り出されるのだ。(松井勝正)

無から有を生み出す神の奇跡的な力を意味していた「創造」という言葉をもともとの意味で使うならば、実は人間にはそもそも物質を創造する能力などない。芸術家が何かを創造するという近代の考え方は、物質の世界ではなく表象の世界でだけ成立するフィクションであるとも言える。(松井勝正)


二十世紀後半の反省を踏まえた現在、人間はもはや自然を支配し得るなどと考えていないし、自らが作ったシステムやテクノロジーにさえ翻弄され、自信を喪失する始末。今や、人間の創造力(と言って悪ければ加工力)を再び信じられるようなアートが必要だ。
二つの引用は『現代アート10講』(武蔵野美術大学出版局)の第2講「メディウムの探求─ミニマリズムとポストミニマリズム」より。

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