エピグラフとかエビピラフ 15/可能性と柔軟性

…溢れそうに盛りこまれた神話のなかの物語は奇抜で豊潤なのに、それぞれの物語についての描写は意外なくらい淡白なのである。それが神話の特性であり、であるから、芸術家は神話のある部分に触発され、新たな作品を創造するともいえるだろう。(宮田毬栄)

阿刀田高著『私のギリシャ神話』(集英社文庫)に寄せられた「解説」の引用。この後、ラシーヌ・ジロドゥ・サルトル・カミュの名、そして阿刀田氏の『新トロイア物語』が挙げられる。本編中にも、モリエール・ゲーテ・ニーチェ、ボッティチェリ・ダヴィンチ・アングル・モローの絵画、ミロのビーナスやベルニーニの彫刻、映画『マイ・フェア・レディ』等々、ギリシャ神話の様々な変奏が登場する。
さて、俳句や抽象画は自ずから余白を伴う表現だが、その余白は言い足りずの空白ではない。新たな読みを開く可能性であり、読者一人一人に応ずる柔軟性である。

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